2012年9月20日木曜日

大変お忙しいクリス・バズビー氏との会話


大変お忙しいクリス・バズビー氏との会話

クリス・バズビー氏が、ECRR (European Committee on Radiation Risk/欧州放射線リスク委員会)の放射線リスクモデルが「最近日本の法律に取り入れられた」と最新の文書で述べられていると聞きました。

放射能に関してはICRP(International Commission on Radiation Protection/国際放射線防護委員会)が標準である日本政府が、そのようなリスクモデルを取り入れると言う大胆な方策を取ったと言うことを聞いてなかったので、是非とも、どの法律であるのかご教示頂きたいと、バズビー氏にお尋ねしてみました。

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こちらが、件の文書のリンクです。これは、“Formal Report to the UNHRC, United Nations Human Rights Council”(国際連合人権理事会への正式報告)の一部として提出された、
The Current Radiation Risk Model and its affects on Human Rights” (現在の放射線リスクモデルとその人権に対する影響)と言うタイトルの文書です。
http://nuclearjustice.org/wp-content/uploads/2012/09/UAJWritten-statements-Busby-UNHRC-13th-Sept.pdf

この文書はこちらからもダウンロードして頂けます。
https://docs.google.com/file/d/0B68f83tqq7QuYkp2SGVhR2UwV1E/edit

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問題の箇所は、文書自体の1ページ目の終わりから2ページ目にかけての部分の中にあり、下記の抜粋においては赤太字で示してあります。

原文
“The averaging process leading to ‘absorbed dose,’ whilst possibly accurate for external exposures, cannot be employed for internal exposures especially to nuclides with chemical affinity for chromosomal components. This has been accepted by the ICRP in its latest report ICRP 103 and regulators are advised to employ different methodology for these internal exposure situations. Such methodology has indeed been developed by the ECRR and the use of the radiation risk model of the ECRR (recently incorporated into Japanese law) leads to accurate prediction of the results of such exposures (ECRR2010).”

和訳
「『吸収線量』を求めるための平均プロセスと言うのは、外部被ばくに関しては正確であり得るかもしれないが、特に染色体成分への化学的親和力を持つ核種への内部被ばくの場合には使えない。これはICRPの最新報告書『ICRP 103』で認められており、規定者は、このような内部被ばくの状況の際には、別の方法論を用いるように勧告されている。こういう方法論は、実はECRRによって開発されており、ECRRの放射線リスクモデル(最近日本の法律に取り入れられた)は、そのような被ばくの結果を正確に予測する事ができるのである。(ECRR2010)」

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下記は、私共、FRCSR (Fukushima Radiation Contamination Symptoms Research) とバズビー氏の間でのメールのやり取りの和訳です。.
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2012年9月3日

FRCSR
バズビー博士、宜しければ、国連人権理事会に提出された文書(添付してございます)の中の下記の文章についての質問にお答え頂けないでしょうか?

「こういう方法論は、実はECRRによって開発されており、ECRRの放射線リスクモデル(最近日本の法律に取り入れられた)は、そのような被ばくの結果を正確に予測する事ができるのである。」

この文章内で、「最近日本の法律に取り入れられた」と言及されていらっしゃいますが、できましたらどの法律であるかご教示頂けないでしょうか?この情報は、日本国民すべてが認識すべきである、重要な情報であると思います。(ご存知かもしれませんが、政府は役立つ情報をいつも自発的に提示してくれるわけではありませんから。)

いつも有益なご活動、ありがとう存じます。

敬具
FRCSR
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2012年9月3日

バズビー氏
You need to contact Gen Morita who told me this. I forward this to him.

森田玄氏から聞いた情報なので、森田玄氏に聞いて下さい。これを彼に転送します。

Chris
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2012年9月3日

FRCSR
と言うことは、「最近日本の法律に取り入れられた」と言うのを、どの法律かと言う事を把握せずに書かれたと理解致しますが、それで間違いないでしょうか?森田氏にはこちらから連絡を差し上げれば宜しいでしょうか?それとも、あちらからご連絡頂けるのでしょうか?

敬具
FRCSR
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2012年9月4日

バズビー氏
I registered which law it was at the time. I am too busy to chase this up as i have a deadline on a book chapter and get about 500 emails a day. I would be grateful, if you want to know that you check it. I recall from memory it was a new law, just passed, relating to the building of new nuclear power stations, or the development of nuclear energy.

その当時はどの法律であったのかを把握していました。これを追求する時間は私にはありません。本の一章を仕上げる締め切りがせまっており、また、処理しなければいけないメールが一日に500通ほど来るからです。知りたいのならご自分で調べて頂くと助かります。私の記憶によると、制定したばかりの新しい法律で、新しい原子力発電所の建設か、原子力エネルギーの構築に関するものでした。
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メールでのやり取り、以上。

FRCSRが認識している範囲内では、ECRR基準が取り入れられた新しい法律はないと思います。日本ではほぼ全てがICRP基準に基づいています。

ちなみに、FRCSRには森田玄氏からのコンタクトはありませんでした。

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追記(2012年10月8日)

2012年10月4日に、バズビー博士から、件の法律は「原子力規制委員会設置法に対する附帯決議14」であるとのお知らせを頂きましたので、ここに報告致します。

原子力規制委員会設置法 http://law.e-gov.go.jp/announce/H24HO047.html
原子力規制委員会設置法に対する附帯決議 www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/ketsugi/current/f073_062001.pdf

「附帯決議十四:放射線の健康影響に関する国際基準については、ICRP(国際放射線防護委員会)に加え、ECRR(欧州放射線リスク委員会)の基準についても十分検証し、これを施策に活かすこと。また、これらの知見を活かして、住民参加のリスクコミュニケーション等の取組を検討すること。」

調べてみますと、「原子力規制委員会設置法案は平成24年6月15日に衆議院で可決、同年6月20日に参議院で可決され、同年6月27日に公布された。」と言う事です。

また、同年9月19日、原子力規制委員会の発足と同時に、原子力規制委員会設置法も正式に施行されました。
http://kanpou.npb.go.jp/20120914/20120914g00201/20120914g002010009f.html

附帯決議について調べました。
http://www.sangiin.go.jp/japanese/aramashi/keyword/katudo01.html

「法律案が可決された後、その法律案に対して附帯決議が付されることがあります。附帯決議とは、政府が法律を執行するに当たっての留意事項を示したものです が、実際には条文を修正するには至らなかったものの、これを附帯決議に盛り込むことにより、その後の運用に国会として注文を付けるといった態様のものもみ られます。附帯決議には、政治的効果があるのみで、法的効力はありません。 こうして委員会で可決された法律案は、本会議に上程され同一会期に両院で可決 されると、政府による公布手続を経て法律となります。」

「附帯決議には、政治的効果があるのみで、法的効力はありません。」と述べられています。



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