2012年12月4日火曜日

東京の子供達の甲状腺での36%の嚢胞は福島との比較データになるか?

2012年12月1日付けの朝日新聞に、次のような記事が掲載されました。


新聞記事書き出し

「福島県内で行われている子供の甲状腺検査で、嚢胞(液体入りの袋状のもの)が多く見つかったことに関連し、東京の病院で約3千人に行った検査でも、同程度に嚢胞が見つかった。伊藤病院(東京)の岩久建志医師らが30日、日本甲状腺学会で発表した。専門家は「原発事故前のデータも含めて比較されており、福島の子供の嚢胞は放射線の影響とは考えにくい」と話している。

発表によると、2003年から今年8月まで、同病院で甲状腺の超音波検査を受けた15歳以下の子供2753人の結果を集計した。この結果、36%の子に嚢胞が見つかった。複数回検査できた189人の42%は嚢胞が小さくなったり消えるなど改善し、14%は大きくなるなどし、残り44%は不変だった。経過観察中にがんなど悪性の病気になる子供はいなかった。

旧ソ連チェルノブイリ原発事故後に子供の甲状腺がんが増えた教訓から、福島県は18歳以下の子供に甲状腺検査をしている。昨年度の実施分の35%で、今年度は42%で嚢胞が見つかっていた。これまで、他地域と比較できるデータがないため、福島第1原発事故後による影響か心配する声も上がっていた。

長瀧重信・長崎大学名誉教授(甲状腺学)は「今回の発表は福島の検査と同等の装置を使い、原発事故前からのデータも含めて調べたものだ。福島の子供の嚢胞も、放射線の影響は考えられない」と話す。

この検査を巡っては、政府は福島県以外の長崎県などで4500人規模の小児の甲状腺超音波検査を実施して比較する計画も進めている。」

   * * *

この新聞記事についての考察

「東京の子供でも原発事故前のデータも含めて36%に嚢胞がみられるのだから、福島の子供の35%から42%に嚢胞があっても、放射能の影響ではない。」

しかし、腑に落ちない点がいくつかあります。

まず、なぜ、原発事故前のデータ「のみ」を出さないのでしょうか?

2003年から2012年8月までのデータは、原発事故を境に、2003年から2011年3月までの8年ちょっと、そして2011年3月11日以降から2012年8月までの17ヶ月ほどの2期間に分ける事ができるはずです。東京と関東地方が放射能汚染を受けたと言う事実は、原発事故後すぐには明確でなかったと思うので、原発事故後の検査というのは実質、1年分ほどかもしれません。

2003年から2011年3月までの8年あまりに、一体どれだけの小児甲状腺エコー検査をしたのか、データ集計の際に年ごとの数字を出す位、簡単にできるはずです。むしろ、医学的データであれば、データを年ごとにまとめ、時間による推移を提示することなど、当たり前ではないでしょうか?

しかし、これは福島医大の山下俊一氏が会長を務める日本甲状腺学会での報告です。そして、東京の伊藤病院は、日本甲状腺学会の認定専門医施設名簿に載っています。

http://www.japanthyroid.jp/public/facilities/kanto.html#kanagawa

ご存知の通り、山下俊一氏は、下記のような通達を甲状腺学会の会員へ送っています。
この通達のせいで、福島で甲状腺検査を受けた子供達が実質セカンド・オピニオンを受けれない状態にあります。



福島の子供における甲状腺異常の頻度が「普通」であり、「放射能被ばくのせいでない」と言う主張は、この通達の主旨とも整合すると言えます。

わざわざ2003年から2012年8月までの、原発事故前後のデータを意図的にまとめて報告し、それが「普通の頻度」であると思わせたいのではないか、と思わざるを得ません。

新聞記事内の、「複数回検査できた189人」と言う数字が気になります。

嚢胞の状態にもよるのでしょうが、原発事故後に甲状腺エコー検査を受けた人達は、一年後に再検査と言われている方が多いようなので、複数回検査されてる方は、原発事故前の検査人数の一部ではないかと推測されます。189人は2753人の約7%です。

長瀧重信氏が言われるように、「今回の発表は福島の検査と同等の装置を使った」ものであるのなら、原発事故前の正確な数字が分かれば、福島での結果と比較するのに最適なデータになるでしょう。

海外からも、「被ばくしてない集団における比較データはないのか?」と再度問い合わせを受けます。もしもそういった比較データがあるのなら、「科学的な理解を促すために」、是非、提示して頂ければ、と思います。

5 件のコメント:

  1. 子供だけの問題じゃないだろ。
    なぜ、大人の健康についても論じないのか。

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  2. 以下のサイトに掲載されている論文(ダウンロードできるようです)は参考にならないでしょうか?英文です。
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrj1993/48/5/48_5_591/_article
    北海道深川市立総合病院の内科部長 松崎道幸さんの意見書 http://1am.sakura.ne.jp/Nuclear/kou131Matsuzaki-opinion.pdf の中で、福島大学副学長山下俊一氏らのグループが2000 年に長崎県のこども(7~14才)250 人を、超音波で調べた…当該論文としてURLが記載されています。

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  3. 今すぐに西日本で無作為に子どもを検査すればすぐ分かることです。
    42%が普通なんてありえない。

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  4. そもそも専門の病院を受診している患者さん達が、スクリーニングの比較対照群になるわけがありません。甲状腺疾患がある確率は普通より高いと考えますがいかがでしょう。

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  5. 有意差を隠すつもりの瓦礫バラマキ広域処理でもあったのでしょう。今現在も受け入れて焼却している地方があります。怒り心頭です。

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