2013年2月7日木曜日

日本経済新聞の電子版記事 「放射線と発がん、日本が知るべき国連の結論」(1月17日付)、 著者ジェイムス・コンカへの反論

2013年1月11日に、米経済誌フォーブスは、“Like We’ve Been Saying--Radiation Is Not A Big Deal”「言い続けているように、放射能は大した問題ではない」と言うタイトルの記事を掲載した。
http://www.forbes.com/sites/jamesconca/2013/01/11/like-weve-been-saying-radiation-is-not-a-big-deal/

この記事の完全和訳は、1月17日付けの日本経済新聞の電子版に、「放射線と発がん、日本が知るべき国連の結論」と言うタイトルで掲載された。
http://www.nikkei.com/article/DGXZZO50651160W3A110C1000000/

著者ジェイムズ・コンカは、「原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)はついにLNT(しきい値なし直線)仮説を低線量被ばくによる発がん推定に使う事はできないと認めた」と述べている。

コンカは、「UNSCEAR 2012」と呼ばれる報告書らしきものに情報源として言及している。コンカによると、「10レム(0.1シーベルト、または100ミリシーベルト)以下の 放射能は『大した事がなく』、LNT仮説は、世界中の自然放射線を含み、原子力エネルギー、医療行為および福島のような事故に影響されている、ほとんどの 地域に重要な放射能レベルの範囲である、10レム(0.1シーベルト)以下には適応しない」と言う。

コンカが実際にリンクしている「UNSCEAR 2012」は、実は、世界原子力協会のニュースサイトであるWorld Nuclear Newsの「国連が放射能に対するアドバイスを承認」と言う記事である。
http://www.world-nuclear-news.org/RS_UN_approves_radiation_advice_1012121.html

しかし、この記事は、2012年12月10日に掲載され、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)第59セッション(2012年5月 21−25日)レポートの内容に、紛らわしく誤解を招くような形で言及している。このレポートは、国連総会公式記録第67セッション補遺46号(以 下、”UN A/67/46”とする)であり、リンク先は下記である。http://www.un.org/ga/search/view_doc.asp?symbol=A/67/46 (コンカは、記事掲載から一週間以上過ぎてから、記事の第二段落の最後にこのリンクを補足した。筆者が1月17日に記事を印刷した際にはこのリンクはなかったため、国連総会議事録内で氏の情報源を探すはめになった。)

この、World Nuclear Newsの「国連が放射能に対するアドバイスを承認」と言う記事は特に、下記に抜粋された10ページ目のパラグラフ番号25(f)に言及していると思わ れ、「国連は、個人と集団における放射能の健康被害について、各国が何が言えるかと言う事について明らかにするアドバイスを採取することになる」と宣言し ている。
                                        
”(f) 一般的に、大衆における健康被害の発症増加は、典型的な世界的標準自然放射線量のレベルの放射能への慢性被ばくのせいであると確実には言えない。これは、 低線量でのリスク評価に関連する不確かさ、放射能に特定した健康被害の生物的マーカーが現在存在しないことと、疫学調査の統計学的パワーの不十分さのため である。故に、科学委員会は、大変低い線量に多くの個人数をかけることにより、自然バックグラウンド放射線レベルと同じかそれより低いレベルの増加する線 量に被ばくしている集団の中における放射能由来の健康被害を推定することは推奨しない。”

しかし、UNSCEARレポート”UN A/67/46”は、単に、「推奨しない」と述べており、それは「各国が何が言えるのか」を規制すると宣言すると言う事とは同じではない。この記事の著者 が誰かは記載されていないが、UNSCEARが、放射能の影響について誰が何を言うかをコントロールしていると推測しているようである。

コンカは、フォーブス誌の記事内で、UNSCEARの「オフィシャル」ロゴの下に次のような文章を示す事により、更に一歩踏み出している。「原子放射線の影 響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)はついに、LNT(しきい値なし直線)仮説を低線量被ばくによる発がん推定に使う事はできないと認めた。これ で日本国民は、自国の食べ物を食べ、怖がるのをやめることができる。情報ソース:国連」。コンカの意見がUNSCEARのロゴの下に位置づけられていると 言う事実は、読者にとっては、これがさもUNSCEARのオフィシャル声明であるかのように簡単に取れる。

コンカの、10レム(0.1シーベルト、または100ミリシーベルト)以下の放射能は「大した事がなく」、「LNT仮説は、世界中の自然放射線を含む範囲で ある、10レム(0.1シーベルト)以下には適応できない」と言う主張に関しては、一体どのようにすればそのような結論に達することができるのか謎であ る。まるで何も無い所から取り出したかのようである。

まず最初に、コンカがリンク先を示している“UN A/67/46”のどこにも、10レム(0.1シーベルト、または100ミリシーベルト)以下の放射能が「大した事がない」、もしくは「世界中の自然放射 線を含む範囲」に適応されると述べられていない。しかし、上記で抜粋したパラグラフ番号25(f)は、「典型的な世界的標準自然放射線量のレベルの放射能への慢性被ばく」に言及している。もしかしてコンカは、「世界的標準自然放射線量のレベル」を自由に解釈し、イランのラムサールやブラジルのガラパリと言うような、珍しいHBRAs(高自然放射線地域)での最も高線量な自然放射線の事を意味しているのであろうか?
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-02-07-03

UNSCEAR 2000 添付B「自然放射線源からの被ばく」の111ページ目のパラグラフ番号92には、「自然放射線からの世界的な年間被ばく量は、一般的に1〜10 ミリシーベルト位であるとみなされ、2.4 ミリシーベルトが現在の平均値の推定である。」と述べられている。
http://www.unscear.org/unscear/publications/2000_1.html

次に、コンカが言うように、10レム(0.1シーベルト、または100ミリシーベルト)以下の放射能が「大した事がない」状況であるわけでは、全くない。進 化生物学者アンダース・モーラー(フランス)とティモシー・ムソー(米国)による2012年のメタ分析「自然放射線の自然変異の、人間、動物とその他の生 物への影響」によると、自然放射線の自然変異は、突然変異率、DNA損傷と修復、免疫や癌を含む病気に大きな影響を持つ事が証明された。
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1469-185X.2012.00249.x/full
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1469-185X.2012.00249.x/pdf

10レム(0.1シーベルト、または100ミリシーベルト)以下の放射能への被ばくの影響は、自然放射線、医療被ばく、チェルノブイリの清掃作業員における白 血病や、原子力発電所の近くでの白血病を含め、英国の放射線生物学者であるイアン・フェアーリーによって論じられている。
http://www.ianfairlie.org/news/recent-evidence-on-the-risks-of-very-low-level-radiation/
http://www.ianfairlie.org/news/a-100-ミリシーベルト-threshold-for-radiation-effects/

3番目に、LNT仮説が、10レム(0.1シーベルト)以下には適応できない、と言うのは本当ではない。フェアーリー氏は、自然放射線量ほどまでも低い線量 でも、統計学的に有意な結果を持つ非常に大きな規模の調査の数々を論じ、低線量における線量反応関係の直線形を示している。
http://www.ianfairlie.org/news/the-linear-no-threshold-theory-of-radiation-risks/

コンカは、日本政府が、放射能汚染を恐れる国民を安心させるために、世界的に認められた食品中のセシウム基準値である1,000 Bq/kg を半分にしたと主張するが、実際には、日本では、福島原発事故のずっと前から、緊急時に使用される食品中放射性物質の指標を設定していた。故に、最初に設 定された暫定基準値である500 Bq/kgのセシウムは、日本政府が国民の恐怖を「緩和」するために妥協したものではない。この基準値は、現時点では100 Bq/kgまで下げられている。米国の基準値は1,200 Bq/kgと、途方も無く高い。すなわち、事故直後に米国が行なった日本からの輸入食品の放射能検査は、測定結果がこの基準値の1,200 Bq/kg以下であったとしても、実質意味がなかったと言う事になる、とも言える。
http://www.fda.gov/newsevents/publichealthfocus/ucm247403.htm

余談だが、コンカが記事内で言及した基準値は正確さに欠けている。日本における現在の牛乳の基準値は、コンカが言うように200 Bq/kgでなく、50 Bq/kgである。

コンカの記事内の、「世界的に認められた食品中のセシウム基準値は1,000 Bq/kg(米国では1,200 Bq/kg)」と言う文章は、この数値を「認める」のが誰かと言う点では、少々誤解を招くような表現である。この高数値は、明らかに原子力の発展を保護し 推進を切望する人達によって決められ、この数値が意味する所を理解し得ない人々に、その判断を課している、。無論、人々の健康と命を守ろうとする人達の視 点は明らかに異なり、このような1,000 Bq/kgや1,200 Bq/kgという基準値の受け入れに反対している。

根本的な事実として言えるのは、この「放射能からの死亡率の計算」と言うレポートより抜粋されたように、無害であると認識される放射線量というのは存在しないのである。

「食品内で許容される放射性物質の公式な最大値は、集団を危険から守るように設定されている。しかし、放射能は化学的毒物とは違い、無害であると言うしきい値 は存在しない。故に、どんなに微量でも、放射能は、無害でも良性でも異存がないわけでもない。当局(政府または国際機関)が標準値や最大許容量を推奨また は設定するという事は、基本的には、ある一定の状態でどの位の死亡率や発病率が容認できるかと言う事を決めると言う事なのである。」
foodwatch.de/foodwatch/content/e10/e42688/e44884/e44993/CalculatedFatalitiesfromRadiation_Reportfoodwatch-IPPNW2011-09-20_ger.pdf
               
実際、欧州の消費者権利グループであるフードウォッチ(foodwatch)と核戦争防止国際医師の会(IPPNW)ドイツ支部は、放射性セシウムの許容限 度を、 乳児食で8 Bq/kgとその他の食品で16 Bq/kgに下げるように要求した。この許容限度は、最大年間実効放射線量の0.3 ミリシーベルトに基づいているが、これはドイツの放射能防護条例において設定されている、原子力発電所での平時の運転時における最大被ばく量限度である。
http://www.ippnw-europe.org/?expand=681&cHash=02aa1d26e8

コンカの記事のコメント欄を読むと、コンカは、「少量のセシウムの経口摂取」は、体内から排出されるから無害だと考えているようである。だが、本当に無害な のだろうか?放射性セシウムは、一般的に認識されているように、単に体内の中でも主に筋肉に分布され、何も害を及ぼさずに排出されるのだろうか?

現在はウクライナに亡命中の、ベラルーシの解剖病理医学者バンダジェフスキーは、放射性セシウムが、体内の骨格筋以外の様々な臓器に蓄積される事を示した。 バンダジェフスキーによると、放射性セシウムは複数の臓器システムに影響を与えるが、特に心筋細胞への影響が大きく、不整脈や突然死を引き起こす。

2013 年1月23日に公表された研究論文 “Artificial Radionuclides in Abandoned Cattle in the Evacuation Zone of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant”「福島第一原子力発電所の避難区域に置き去りにされた牛における人工放射性核種の分布」では、日本の研究者のグループが、牛の様々な臓器にど の位の放射性セシウムが蓄積されたかを示した。
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0054312
内容の要点和訳
http://fukushimavoice.blogspot.ca/2013/02/blog-post.html

蓄積した放射性セシウムが、これらの牛において発癌に至ったかどうかは、今となっては知る術がない。と同時に、日本政府が避難区域に置き去りにされた家畜の 処分を命じたために安楽死させられたこの牛達が、何らかの疾患を発病していたかも定かでない。しかし、臓器内に蓄積された放射性セシウムから放出される放 射能が、心臓、腎臓、肝臓、肺、膀胱や甲状腺などの臓器のデリケートな細胞や組織において、全く何も害を及ぼしていなかったとは考えにくい。

コンカは、UNSCEARが福島原発事故による観察可能な健康被害を見つけなかった事を盾に、日本の人々は再び国産の食品を食べ始め、世界のほとんどの場所の自然放射線レベルと同様の、軽い放射能汚染を受けている地域に戻る事ができる、と述べている。

“UN A/67/46”の4ページ目のパラグラフ番号8によると、委員会の調査に用いられたデータの情報源は、日本政府、国際連合加盟国、そして包括的核実験禁 止条約(CTBT)機関、国連食糧農業機関(FAO)、国際原子力機関(IAEA)、世界保健機関(WHO)や世界気象機関(WMO)などの諸機関だっ た。また、ピア・レビュー科学雑誌に掲載された情報や分析、そして一般市民によってクラウドソーシング・ウェブサイトにアップロードされた測定値なども使 われた。

UNSCEAR は、低線量被ばくの放射能リスク推定を設定する際に、癌と遺伝的影響しか重要だとみなさない。故に、パラグラフ番号9(a)で「作業員や子供や、集団の他 のメンバーにおいて、放射能被ばくのせいである健康被害は見られなかった。」と述べられているのは不思議ではない。原発事故から22ヶ月後の段階では、放 射能由来の癌の発症はまだ起こっていないと思われており、日本政府も福島県も、先天性奇形のような遺伝的影響を示すような疫学調査を積極的に行なっていな いように思われる。

しかし現実には、非公式ではあるが、福島県のみならず、東京や、東京の周囲の関東地方でも、無脳症や白血病などの報告はある。また、鼻血、湿疹、疲労や、感 染症の蔓延や再発なども東京と関東地方で報告されており、地域によっては、小中学校の検診時での心電図異常が増加している。橋本病や亜急性甲状腺炎などの 甲状腺疾患の報告も頻繁になっている。東京と関東地方で、子供の白血球が低下していると言う話もある。

福島第一原発での収束作業に従事している東電と下請け企業の作業員においての健康被害はないと報告されているが、だからと言って、それを証明する調査や検査 結果が公表されているわけではない。すなわち、作業員達が何も健康被害をこうむってないと言う、客観的な証明はないのである。原発事故後、公表されている だけで少なくとも5人の作業員が亡くなっているが、東電が個人情報保護のために死因を公表しなかったケースもある。これとは別に、福島第一原発の4号機 タービン建屋で、震災後間もなく東電社員2人が死亡している。

コンカが次のような情報をどこから得たのかは不明である。「事故後のフクシマ作業員6人の偶然の死は、放射能とは全く無関係であり、彼らは瓦礫に押しつぶさ れたり、海に流されたりと言う事故のせいで亡くなった。」何の根拠も示さずに、その6人の作業員が事故で亡くなったとほのめかすのは、とんでもない事であ るように思える。これを証明するような、ビデオテープや目撃者の証言などはあるのだろうか?コンカは、地震と津波の後の日本で何が起こったのかを「本当 に」理解しているのだろうか?

最初に亡くなった作業員は、60歳の男性で、福島第一原発で働き始めた2日目に「心筋梗塞」で亡くなった。この男性は、仕事のある都度、様々な原発へ出稼ぎ に行く、多くの「季節原発労働者」の1人だった。こういう原発労働者達は、自分の累積被ばく量を把握していないかもしれない。突然の心臓死は、単に「心筋 梗塞」と呼ばれる事が多い。そのような事を考慮すると、この男性の「心筋梗塞」は、長期間に渡る放射能被ばくのせいであると言えるかもしれない。

次に、40代の作業員が、2011年8月の初めに福島第一原発で一週間仕事をした後、同年8月半ばに急性白血病で亡くなった。この作業員の被ばく量は0.5 ミリシーベルトだった。東電はこの男性の白血病と放射能との因果関係を否定した。この男性が、福島第一原発での作業の前に、何らかの職業的な放射能被ばく をしていたかどうかは不明であり、東電は調査をするつもりもなかった。

亡くなった詳細が分かっているもう1人の作業員は57歳の男性であったが、2012年8月22日に気分が良くないので休んでいた所、意識を失っているのを発 見された。病院に搬送されて死亡が確認された。福島第一原発で一年間作業をした結果の累積被ばく量は、25 ミリシーベルトだった。

パラグラフ番号9(e)では、2011年3月末に飯舘村、川俣町といわき市で1083人の子供(男子544人と女子539人)に行なわれた甲状腺被ばく調査 の結果、甲状腺等価線量の100 ミリシーベルトに基づいたスクリーニングレベル(0.2 μSv/h)を超えた子供は居なかったと言及されている。

2011年11月13日に開催された、国連総会第67セッション第4委員会の議事録より抜粋する。
http://www.un.org/News/Press/docs/2012/gaspd523.doc.htm
「この調査においての最高値は『35 ミリシーベルト』であり、チェルノブイリ事故の時よりもはるかに低いために、安心できる報告として国連総会で伝えられ、UNSCEARアルゼンチン代表は、『その良いニュースは強調されるべきだ。』と力説した」

この甲状腺被ばく調査は、いわき市で2011年3月26−27日に、川俣町で2011年3月28−30日に、そして飯舘村では2011年3月29−30日に 行なわれた。飯舘村では、バックグラウンド放射能レベルがところによっては10 μSv/h 以上あったりと、大変高かったため、必死でバックグラウンド値が低い場所を探さなければいけなかった。やっと、市役所の会議室一画でバックグラウンド値が 0.2 μSv/hである場所を見つけ、そこで300人の子供の甲状腺被ばく量検査が行なわれた。飯舘村の子供達を含んだグループ全体として、55%が 0 μSv/h 、26% が 0.01 μSv/hであり、全体として 99%が0.04 μSv/hだった。一番高い数値は 0.1 μSv/hだった。だが、バックグラウンド値がそんなに高い場所で、正確な測定ができると証明できるのだろうか?

それにも関わらず、一番最新の県民健康管理調査の甲状腺エコー検査の結果によると、95,954人の子供の38,327人 (39.9%) に異常が見つかっている。福島県には約36万人の子供達が居住しており、甲状腺エコー検査の先行検査はまだ終わっていない。
www.fmu.ac.jp/radiationhealth/results/media/9-2_Thyroid.pdf

コンカはフォーブス誌の記事で、「UNSCEARは去年の福島での原発事故による観察可能な健康影響を見つけなかった。全く影響がなかった。」と書いているが、真実はかけ離れているかもしれない。

失礼かもしれないが、コンカが言及しており、彼の主な情報源であると思われるWorld Nuclear Newsの記事内でも言及されているWHOや東京大学の研究調査の情報は、正確でないかもしれない。実際にコンカがどの研究調査に言及しているのかは、知 る術がない。もしもWHOの「2011年東日本大震災後の核事故による予備的線量推定」であるなら、その情報源は主に日本政府の公式発表であると思われ る。
http://www.who.int/ionizing_radiation/pub_meet/fukushima_dose_assessment/en/index.html

日本政府は確かに20キロ圏内に避難命令を出したが、実際の避難状況は混乱を極め、政府がSPEEDIシステムの予測情報を公表しなかったために、場合に よっては放射能プルームの方向へ避難した人もいた。また、避難したと言っても、単に福島県内の別の市町村へ移動した場合、そこで放射能プルームに会う、と いう場面もあった。「福島県を速やかに避難させた」と言うと聞こえはいいが、実際にはそんな綺麗事ではなかったと言う事だ。安定ヨウ素剤は、町長の勇気あ る行動の結果、福島県の反対を押し切って独自の判断で町民に投与させた三春町以外の市町村では、統一して投与されていない。こういった詳細は、公的文書に 含まれていない場合があり、海外から情報を探す場合には入手しにくい。

実の所、多大な放射能汚染を受けたのは、福島県だけではない。放射能プルームは最初は北東へ向かったが、南に方向を変え、東京や関東地方を含む広範囲を汚染した。

この画像は、福島第一原発から5キロ西に位置するモニタリングポストで新たに見つかったデータを使って構成された、最近報道されたヨウ素131の拡散シミュレーションである。


東京大学の研究調査に関して、コンカはこの「福島原子力事故後の内部被ばく」に言及している可能性がある。この研究では、被ばく量が少ない、と報告された。
http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1346169

しかし、この研究の結果には、いくつかの理由で疑問が生じる。まず最初に、内部被ばくは、ガンマ線しか測れないホール・ボディー・カウンターを用いて測定さ れた。放射性セシウムというのは、ベータ崩壊によって放射性バリウムになり、この放射性バリウムがガンマ崩壊をするのだが、その際のガンマ線がセシウムの ガンマ線として測定されている。結果として、ホール・ボディー・カウンターの検査結果は、ガンマ線の測定しか含んでいないために、原子炉から放出されたで あろう様々な放射性核種による内部被ばくを真に表しているとは言えない。また、この研究での検出下限値は、かなり高い設定で210から250ベクレルで あった。

コンカが、分量が少量であってもまだまだ汚染されている食品の消費や、「少ししか汚染を受けてない地域」への帰還を促しているのは興味深い。まさに全く同じ 事が、日本政府により、「復興」事業として促進されているからである。実際、日本での経済新聞大手である日本経済新聞は、コンカによるフォーブス記事の完 全和訳を、2013年1月17日にオンライン版で掲載した。
http://www.nikkei.com/article/DGXZZO50651160W3A110C1000000/

誠に、フォーブス誌と日経新聞がどちらも「経済」誌であると言うのは興味深いところである。「経済」に関心を持つ人達は、「平和な」原子力使用を推進するた めに、放射能や放射能汚染による健康被害を積極的に極小化しがちである。即ちそれは、結果として、汚染されていない空気を吸い汚染されていない食べ物を食 べると言う、人間が持つ基本的人権を無視することである。

コンカは、自分の専門分野である核廃棄物処理の事になると、興奮気味のようである。少なくとも、コンカは、除染と呼ばれている、表土や落ち葉を移動させるだ けの行動が全くお金の無駄であると正しく指摘している。しかしながら、コンカは、放射能で汚染されているかもしれない震災瓦礫が、多大な費用を費やして全 国に搬送されて焼却されているのを知っているのだろうか?記事を書く際に、情報の確かさを証明できるような下調べをしていると思えないので、おそらく知ら ないだろうと思われる。

食品の放射能基準値が下げられた事は、日本人が「理由のない制裁」を受けていることになるのだろうか?100 ミリシーベルト以下の線量にLNT仮説を適応し続ける事は、本当に犯罪的なのだろうか?

もちろん、コンカには、例えどんなに情報を混乱させておくための意図的にあいまいな屁理屈、即ち、コンカ自身がフォーブス記事内で用いた言葉であ る”prevaricating”に表現されるような言動であっても、自分の意見を主張する権利はある。(コンカ自身、フォーブス記事内で、 “prevaricating”という言葉をUNSCEARに向けて発しており、「言葉を濁すようなことをやめろと言い続けて来た」と述べている。)しか し、「100 ミリシーベルトは大した事がない」と大言壮語するのを見ると、「ミスター100ミリシーベルト」として有名な福島医科大学の山下俊一氏には新しい友人がで きたかもしれないと思わずにいられない。そして、本当に犯罪的なのは、「許容された世界的基準値」が何であったとしても、日本人に、どんなに少量の放射性 物質であっても、放射能汚染された食品の摂取を強要することである。

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